公認会計士

大手監査法人(BIG4)のAI活用動向

今回は大手監査法人(BIG4)のAI・機械学習や最新IT技術の活用、調査研究状況について調査した結果をまとめてみます。少しでもご参考になれば幸いです。他にも事例などがありましたら「お問い合わせ」のところから教えてもらえれば追記いたします。

  • EY新日本有限責任監査法人
  • 有限責任監査法人トーマツ
  • 有限責任あずさ監査法人
  • PwCあらた有限責任監査法人

Contents

EY新日本有限責任監査法人

EY新日本有限責任監査法人は、東芝の粉飾決算の事例から、有効な会計監査ができていないことが露呈し、ブランド価値を大きく毀損しました。そこから、監査品質を上げたとアピールするためにも、AIの導入に力を入れています。

EY新日本は異常検知アルゴリズムを実用化

EY新日本はAIによる会計仕訳の異常検知アルゴリズムを実用化したとプレスを打っています。(2017年11月6日)これはEY新日本の中にある「Digital Audit推進部」という部署で開発されたようです。

アシュアランス・イノベーション・ラボ(AIL)、Digital Audit推進部を設置

2016年11月には、先端デジタル技術を会計監査に導入するためアシュアランスイノベーションラボ(AIL)を設置しました。それに加えて、さらに100名体制のDigital Audit推進部を設置し、AILと協働することで開発した監査へのDigitalツールの導入を促進していきたいのでしょう。

しかし、この100名体制というのが気になります。おそらく半分以上は別のものと兼務しているはずです。普段は普通の会計監査業務をやっている人も、たまに会議に出席するかメーリスに入っているとかで重複してカウントされていると思いますね。100人×800万円=8億円、とかの予算を監査技術の研究だけに割けるとは思えません。

異常検知アルゴリズムの特許を取得

EY新日本は、2018年6月に、会計仕訳の異常検知アルゴリズムの特許を取得したとニュースリリースを配信しています。このアルゴリズムはHelix GL Anomaly Detector (Helix GLAD)と呼ばれており、2017年10月から試験運用を開始し、2018年度で20のエンゲージメントで使用され、2019年度では100のエンゲージメントに拡大するそうです。

日本発の異常検知アルゴリズムがグローバルで評価

EYグローバルのサイトにもこのHelix GLADというアルゴリズムのプレスは出ており、そこにErnst & Young ShinNihon LLCと明記されていることから日本のEYが開発したことは本当でしょう。日本発の異常検知アルゴリズムがグローバルに使われるようになる、という点でEY新日本は国内他法人の一歩先を進んでいると言えそうです。

有限責任監査法人トーマツ

有限責任監査法人トーマツも会計監査業務にAIを導入しているようです。「監査法人 AI」で検索すると一番上にAudit x AIというトーマツのサイトが出てきます。そんなトーマツがどうやってAIを活用しているのか、記事を見てみましょう。

Audit × AI

HPによると、先端テクノロジーを扱うスキルとビジネス感覚を併せ持つハイブリッド型会計士を育成しています。公認会計士はAIを活用する立場になる、との理解のようです。

出典:Audit × AI 有限責任監査法人トーマツ採用サイト

Audit Analytics

大規模かつ広範なデータ活用を行うため、トーマツではAudit Analyticsというデータ分析が行われているようです。いくつかの事例が紹介されています。

  • 売上分析・売上に関するリスク評価事例
  • 海外子会社のリスク評価事例
  • 業務ルール逸脱に関連するリスク評価事例
  • 在庫評価に関するリスク評価事例
  • 固定資産評価に関するリスク評価事例

これらはAIというよりかは、統計的手法を用いたデータの可視化だと思われます。これらをもとに、公認会計士が職業的専門家としての判断を行うのでしょう。

人工知能が日本の会計監査業務に与える影響について

OCR(Optical Character Recognition、光学文字認識)を用いることで、書類などをAIが画像認識を行うと書かれています。また、継続的監査も進んでいくと書かれています。

  1. すべての作業を人が行う
  2. 入力は自動化し確認を人が行う
  3. 全て機械が行う

AIはこの順に導入が進んでいくようですが、詳細は不明でした。

監査イノベーションへの挑戦

20ページもあるインタビュー記事であり、話した内容がそのまま書かれているのでとりとめのない形式です。ポイントを軽くご紹介しますが、興味ある方はご自身でご確認ください。

  • 見積もりの合理性の検討に機械学習を用いている
  • 確認手続のプラットフォームを活用している
  • 継続的監査の実現性が高まる
  • AIは人間を支援し人間の能力を拡張するツール

監査イノベーションの推進事例

Big Data x AI

予測モデリング。リスク案件の予測、業績予想の妥当性をモデルが算出した数値と比較して監査ができる

デジタルトランスフォーメーション

Balance Gatewayという残高確認手続きをオンラインで実現するサービスの活用

先端的技術の研究・開発

契約書解析ツールで、契約書の分析結果をビジュアル化

業務の標準化

トーマツ監査イノベーション&デリバリーセンター(AIDC)という、監査補助業務を専門的に行う拠点を作り、監査業務の反復的な要素を標準化して集約することで効率性と品質を高める

データ分析で地に足の着いた監査業務効率化を推進

監査イノベーションなどを検索しても、不思議とAIという話はあまりありませんでした。一方で、Audit Analyticsなどでは会計監査業務におけるデータ分析を高度化し、次世代の監査を目指しているようです。

有限責任あずさ監査法人

KPMGの一員であるあずさ監査法人がどのような領域でのAI活用に力を入れているのか調査していきたいと思います。

次世代監査技術研究室

あずさ監査法人には「次世代監査技術研究室」というチームがあります。ここではIT専門家やデータサイエンティストが分析結果や知見を監査チームに提供することや、監査上の判断の支援をするシステムの開発がメインに行われています。

次世代監査技術の導入事例

高度なデータ解析

不正シナリオを作り、可視化、統計の技術を用いた異常分析をしています

財務諸表分析/不正リスク分析モデル

過去の財務数値や同業他社比較を行っています

AI技術を活用したQ&Aシステム

自然言語処理を使って、会計、監査、不正事例について教えてくれるQ&Aボット「KOMEI」を開発しています

データ処理の集約化・高度化

データの加工、集計といったデータ処理の集約化、効率化を行っています

RPAの監査への導入

定例作業をロボットが行うようにして、会計士がより高度な判断業務に集中できるようにしています

出典:次世代監査技術の導入事例

あずさ監査法人はデジタル監査を強化

データ分析の強化

現在の次世代監査技術研究室には会計士とIT(情報技術)系技術者、データ分析専門家がそれぞれ約20人所属する。不正検知など監査に役立つ技術として特にデータ分析に着目しており、増員で50人以上をデータ分析専門家が占める体制にする考え

出典:あずさ、デジタル監査100人体制へ AIで不正検知も:日本経済新聞、2018年11月2日

データ分析はデータ可視化と組み合わせることで、公認会計士がわかりやすいデータに変換することに主眼が置かれます。データ分析の結果をもとに、公認会計士が判断を行います。

AIが不正の可能性を判定

企業内の会計処理データのパターンからAIが不正の可能性を示唆するような、実際の監査へのAI活用も「今後1~2年で始まる」(次世代監査技術研究室の小川勤室長)とした。

出典:あずさ、デジタル監査100人体制へ AIで不正検知も:日本経済新聞、2018年11月2日

しかし、次の問題点も指摘されています。

  • 不正の判定には会計処理のデータだけではなく、不定形の文書なども考慮する必要がある
  • 日本語は自然言語処理が難しく、AIの開発が難航するおそれがある

あずさ監査法人はAI活用に力を入れている

あずさ監査法人もAIについてのコメントを多く出しています。しかし、まだ実用には程遠いといった印象です。HPにある情報も、ぼんやりとしたものばかりで、他のBIG4はすでにアルゴリズムの特許などを取得していますから、それに比べると研究が遅れているようです。AIの重要性はわかっているようですので、今後に期待です。

PwCあらた有限責任監査法人

PwCあらた有限責任監査法人も会計監査へのAI活用に積極的です。まず目を引くのはPwCのコンサルの強さです。AIでもコンサルを行っているので、会計監査以外へのAI活用事例のレポートをたくさん出しています。そんなPwCが会計監査ではどのようにAIを活用するのか見ていきましょう。

監査の変革 どのようにAIが会計監査を変えるのか

PwCが出している「監査の変革 どのようにAIが会計監査を変えるのか」というレポートの中では、「将来的には高度化された被監査会社と監査人のシステムが連携し、AIによる自動かつリアルタイムの監査が行われることになるだろう」と書かれています。これは継続的監査(Continuous Auditing)のことでしょう。こういった大きな展望を考えた上で、監査手続のAI化が事細かに書かれています。

特にAI化の影響が大きい部分として次をあげています

内部統制の整備評価
  • 音声認識による記事録の作成
  • 記事録をもとに業務フロー図やリスクマトリックスの自動生成
証憑突合
  • 注文書などを自動で売上明細と突合
仕訳テスト
  • 仕訳データや補助元帳をもとに、異常な仕訳などの不正検知
開示チェック
  • 財務諸表と補助資料から、開示が正しいかを自然言語処理で自動チェック
実施時期

継続的監査が可能になり、被監査会社のシステムから毎日データを受信、監査上の検討が必要なものがあれば監査人に通知

ここまで考えたレポートを出している法人は私が知る限り他にありません。

AIを活用した会計仕訳検証システムを開発

  • PwCあらたは2016年10月にAI監査研究所を設置
  • 2018年4月から「AI会計仕訳検証システム」の試験運用を開始

AI会計仕訳検証システムは、仕訳テストにおいて、統計的手法をもとに異常な仕訳を抽出するシステムです。機械学習をもとに一定の法則性を見つけ出し、それから外れているものをリストアップします。

PwCはAIの活用に積極的

PwCはデジタル、AI領域における多くのコンサルティング経験から、自社でのAI活用にも積極的だと思われます。国内においては他のBIG4より規模が小さいですが、AI活用においては他法人にも負けていないことがわかりました。

さらに知りたい方はこちら

公認会計士はどのようにAIを活用するのか?- Part.1日本公認会計士協会のHPには、公認会計士の仕事はAIで代替できないと書いてあります。極論はそうだと思いますけど、現時点での監査法人の実務を見ればなぜ公認会計士やっているのかわからない、言い換えれば誰でもできる仕事がたくさんあります。公認会計士がどうやってAI(人工知能)やRPA(自動化)を活用するのか、課題とともに考察します。...

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