公認会計士・監査審査会は毎年の会計士試験の合格者について整理した、公認会計士試験合格者調を公表しています。今回は合格者調の数値をもとに会計士試験について調査検討をしてみます。
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”合格者調”の内容
公認会計士試験合格者調は会計士試験を受験した人数やその状況、合格者数などを数値で公表しています。
その内容は次の通りです。
- 年別合格者調
- 年齢別合格者調
- 学歴別合格者調
- 職業別合格者調
- 財務局別合格者調
今回はこれらの合格者調について10年分のデータを用意し、そこから会計士試験について分析を試みます。適宜その他のデータを参照する場合には出典を明らかにします。
願書提出者数・合格者数・合格率
会計士試験の受験者数と合格者数は様々な影響で増減します。ここでは平成7年からの願書出願数(受験生)・合格者数・合格率※1の3点から分析をしてみます。
※1 ここでの合格者は 合格者数 ÷ 願書出願数 を用いています。
合格者は金融庁などの影響を受け増減する
会計士の合格者数は平成19年に4,041人でピークを迎えます。俗に言う「大量合格世代」はこの周辺年を指します。合格者数は平成17年の1,308人から2年でおよそ3倍に増加しました。合格者数は金融庁の政策で増減します。増加理由に関しては他のサイトにて多くの考察が行われているため省略します。
大量合格世代は長くは続かず、平成23年には1,511人と元の水準の合格者数に落ち着きます。その後は1,000〜1,300人程度の年が続いてきました。
合格者数と受験者数はミスマッチすることも
受験者数は会計士に対する社会の期待を受けて増減します。景気の良し悪しや会計士資格の魅力を反映していると考えられるでしょう。
会計士の受験者数は平成22年に25,648人でピークを迎えます。これは当時は不況であり「手に職」志向が強かったことや大量合格世代の合格者数を見て受験生が増えたのではないかと考えられます。
しかし、前述した通り大量合格世代は長くは続かず、受験者数と合格者数はミスマッチするようになりました。平成19年には19%あった合格率が平成23年には6%に下落したことからもこのミスマッチ現象が見て取れます。
その後、平成26年までに合格率は10%までに回復し、その後は10%前後での合格率で推移しています。
学歴別の合格者について
それでは次に合格者の分析に移りましょう。どのような属性の人が合格しているのでしょうか。ここではまず、平成30年論文式試験の合格者をその学歴別にわけてみました。
合格者のボリュームゾーンは大卒
※2 上の円グラフは大学・大学院・その他で分割しています。それぞれフィルターを付けることで、その細目を見ることが可能です。
合格者の学歴では、大学が最も多く、中でも平成30年試験は大学在学時に合格する人がおよそ全体の4割を占めています。また大学卒業後に合格する人も3割ほどを占めていますが、ここには①大学卒業後に就職せず予備校・専門学校で学業に専念した人、②大学卒業後に一度就職し、その後いずれかの段階で会計士試験を受験した人の2パターンがいるはずです。
また大学院進学・卒業後後に会計士試験に合格した人は全体の1割程度です。ここにはアカウンティング・スクールと呼ばれる会計専門職大学院が含まれます。
また高校卒業後に大学には進学せず合格する人が5%程度存在します。
平成30年試験では上記のような分布でした。では、次に過去からの推移をみてみましょう。
7年で大学在学中合格は2倍に
過去10年の学歴別の合格者の推移は上記の通りです。ここで特筆すべき点は、大学在学中合格者数の増加です。上記のチャートにおいて、大学在学を選択してもらえばわかるように、大学在学時の合格者数は平成24年の298人から平成30年には562人と1.9倍に増加しています。そのほかの属性の合格者数は横ばいもしくは減少傾向にある一方で大学在学中合格者数のみが右肩上がりで上昇をしています。
大学別では慶応が最も多くの合格者を輩出
ここで参考までに大学別の合格者数の推移をみてみましょう。下記のチャートは公認会計士三田会調べに基づいて作成しました。
会計士試験合格者の出身大学として慶応大学は圧倒的です。過去10年間1位を譲っていません。その次に早稲田・中央・明治が続きます。
年齢別の合格者数について
次に年齢別の分析に移りましょう。
上記のチャートは左の色ほど若い人を、右の色ほど年齢の高い方を表しています。
ここで、平成21年から平成30年にチャートを移すと、平成21年までは25歳以下の人が4割程度でしたが、平成30年では過半数を超えていることがわかります。
また割合としては少ないですが20歳以下での合格者も10年で2倍以上に増えています。
大学在学中の合格者が増えるにしたがって、会計士試験合格者の若返りが進んでいるようです。会計士試験合格者の平均年齢は過去10年間でおよそ2歳分若くなったようです。
職業別分析
会計士試験合格者調では、受験者をある程度職業別に分けて開示しています。
ここでも学生の比率が高いことが見て取れます。
また大学・大学院卒業後もしくは就職後に会社を退職し、無職で会計士試験を受ける人が1割ほど存在します。
女性会計士の増加について
公認会計士業界では女性の活躍が求められています。それでは、女性会計士は増加しているのでしょうか。
上のチャートを見てもわかるように、女性会計士は増えていません。合格者数は全体の合格者数の減少を受け、同様に減少しています。また合格率に関しても横ばいというところでしょう。
最年少・最高齢合格者について
16歳 | 平成22年 |
---|---|
17歳 | 平成26年 |
18歳 | 平成21年、24年、30年 |
19歳 | 平成23年、25年、27年、28年、29年 |
合格者調においては、最年少合格と最高年齢合格者の年齢を開示しています。過去10年間の最年少合格者は上図の通りでした。平成22年には16歳での合格者が存在しています。
また過去10年で最高齢の合格者は平成26年及び平成27年の試験における67歳でした。
試験をより良く知ろう
会計士試験を始めるにも、続けるにも、また勉強をやめるのにも、正確な情報の把握をしていて損になることはありません。上記の情報が受験生の皆様のより良い将来に繋がることを願っています。
また会計士試験の関係者の皆様で、お気づきの点がございましたらぜひ下のコメント・ボックスよりご意見を頂けないでしょうか。いただいたコメントについては、できる限り上記の分析に反映できるよう善処いたします。
今後ともIT会計キャリアをどうぞよろしくお願いいたします。
