会計

システム監査人と公認会計士

公認会計士、会計監査の仕事がAIに奪われる!というのはよく聞きますが、それ以前にシステム監査人との棲み分けが問題になると思っています。そこで今回は、公認会計士とシステム監査人(IT専門家)の役割分担について考察していきます。

なお、公認会計士とAIについてはこの過去記事も参考にしてください!

公認会計士はどのようにAIを活用するのか?- Part.1日本公認会計士協会のHPには、公認会計士の仕事はAIで代替できないと書いてあります。極論はそうだと思いますけど、現時点での監査法人の実務を見ればなぜ公認会計士やっているのかわからない、言い換えれば誰でもできる仕事がたくさんあります。公認会計士がどうやってAI(人工知能)やRPA(自動化)を活用するのか、課題とともに考察します。...

監査法人のIT専門家

監査法人のIT専門家は、会計監査に関連して次の仕事を行っています。

システムの監査

企業の内部統制には、「手作業による統制」と「自動化された統制」がありますが、自動化された統制が重要性を増しています。内部統制の有効性は重要な虚偽表示リスクに関連しますから、それらを評価しなければなりません。

しかし、多くの会計士はITに詳しくないので、IT専門家と協力してどこにリスクがあるのかを理解します。そして、IT統制に関する監査手続は、公認会計士が直接は関与せず、IT専門家だけで監査手続きを行っている部分もあると感じています。データフローなどの抽象的な部分は理解できても、システムの詳細な設定に対する監査手続はIT専門家でないと行えません。

データ分析

監査手続のうち、仕訳テストなどはIT専門家が担当することがあります。システム監査では、システムの動き、設定、データベース等を監査することに主眼がありました。一方で、ここでいうデータ分析とはクライアントからもらった大量の仕訳データがExcelでは分析不可能な場合に、SQLその他のより強力なデータ分析ツールを使って加工、可視化することです。ビッグデータ、といった単語も流行っていましたが、会計監査の現場でも受領データの容量は増加の一途をたどっています。もらうデータが大きくなると、監査人の貧弱なPCに載ったExcelではフリーズしてしまって分析ができないので、IT専門家を頼るしかありません。

それに、会計データの加工は会計士が指示をすれば、会計士が手を動かす必要がありません。公認会計士にITを教えるより、ITが得意な人材に初歩的な会計を教えるほうが効率がいいです。

加えて、IT専門家は公認会計士より明らかに賃金が低いです。SEが全般的にブラックなので、月給23万で終電まで働いていました!みたいな人が平気でいます。だから公認会計士より低い賃金でも人が集まってきます。データの加工ではIT専門家でも公認会計士でも差が出ませんから、価格競争力があるIT専門家が行う場面が増えています。

IT専門家と公認会計士

監査手続の中でITの重要性が増していくにつれて、会計監査のうち公認会計士が行えない部分が増えていきます。そのときに、公認会計士の価値がどこにあるのかを考えないといけないと思っています。

会計監査では財務諸表が適正に作成されていることについて保証しますが、そのうち公認会計士でなければできないことはどれくらいでしょうか?

クラウド会計ソフトなどが流行っていますが、社長が公認会計士でない会社があります。会計ソフトの開発会社はエンジニアや営業社員など、公認会計士ではない人が大半であり、一般事業会社の経理社員も多くは公認会計士ではありません。会計自体は公認会計士じゃなくてもできるという事実に危機感を感じたことがあります。

公認会計士は、会計士にしかできない仕事に集中すべき

公認会計士にしかできない仕事、つまり会計や監査の知識が直接生きる仕事、というのは何でしょうか。例えば、新しい取引が誕生したときにそれを会計処理に当てはめることや、条文の解釈、金融庁対応といった部分かと思います。

話がそれますが、私は公認会計士試験を難しくすることはあまり意味がないと思います。なぜなら、公認会計士の仕事が多岐にわたるようになり、全員に共通して必要になる部分が少なくなっているからです。

簿記1級とITの知識があればそれなりの会計システムは作れるんじゃないかと思います。公認会計士試験は簡単になり、試験合格後の自己研鑽がより重視されるようになっていくと思います。

公認会計士としての心構え

最も大切なことは、今の監査実務を疑うことではないでしょうか。私が入所したときとも監査実務は大きく変わっています。監査法人が現在行っていることの中には改善できるところがたくさんあるはずです。不毛な業務を行うことはやめて、公認会計士として高付加価値の分野にリソースを集中投資する必要があります

そして、実務のおかしい点に最もよく気がつけるのは新人だと思います。私は入所して間もない頃、合理的ではない実務に多くの疑問を持ちました。しかし、業界に何年もいると当たり前になってしまい、おかしいと感じる心を失ってしまうことがあるのです。

だからこそ、今の監査実務を疑い、おかしいと思ったことは積極的に発信していくことが業界の発展につながると思ってこの記事を書いています。この業界は変えていかなければなりません。